ジャカランダについての考察(KENさんから)・・・その6

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(撮影日:2008/6/12)
↑写真は、今年我が家で咲いたジャカランダです。

KENさんからの 「ジャカランダについての考察」 その6 の原稿が届きました。情報の少ないジャカランダについて、このような詳しく専門的な資料を、わたしのような拙いブログでご紹介させていただいていいのかしらと、思ってしまいますが、微力ながらお役に立てれば、光栄なことと思っています。
大変専門的で、難しい内容ではありますが、ジャカランダの品種改良への道のり、ご興味のある方は、是非読んでいただければと思っています。

その6は、「種間交雑育種」 についてのお話で、KENさんが携わられたJICAのプロジェクト 「アルゼンティン園芸開発計画」 の責務を終えられた後、日本においてもジャカランダの育種を続けられる中、ドキドキするような出会いがあり、現在に繋がる具体的な育種作業についてご紹介いただいています。
以下、KENさんからの原稿です。

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(撮影日:2008/6/6)

<種間交雑育種――アクティフォリアの場合(1)> 

私がハカランダの育種を始めたきっかけは、JICAの「アルゼンティン園芸開発計画」なるプロジェクトで、若いINTAの研究者たち相手に行った、花の育種の手解きにありました。原生地の花卉を使って、というのがその至上命令でしたから、それならブリスベーンで感動したあのミモシフォリア、その故郷はアルゼンティンなのだから、まずは何をおいても加えなければ、と思いました。

ところで、ハカランダの世界中での需要を大きく喚起するためには、実生から開花まで10年もかかるようでは間尺に合いません。それで稚樹開花性を、育種目標の第一の柱に据えたわけです。
が、実を言えばその裏には、(1)耐寒性との絡みあいもありました。小さいサイズで開花すれば、冬は室内にも容易に取り込めます。そして樹齢が進んで耐寒性が付いたら(自ずと限界はありますが)、戸外の庭植えにすればよいわけです。また、(2)若木の内からじゃんじゃん開花するようだと、「並み」のミモシのあの馬鹿でかいサイズにはならないだろう。とすれば、庭木として入り易いサイズなので一般に広く受け入れてもらえるのではないか、という計算もありました。

その結果を紹介したのが、「その3」の「ミモシフォリアにおける稚樹開花」で、それは「その4」の「クスピディフォリアにおける稚樹開花」へと発展していきました。

ところで日本に帰国して暫くして、フラワーパークかごしまに小苗で開花するハカランダが宮崎から導入されている、ということを聞きました。それで「この春開花したら教えてよ」とINさんに依頼していたら、「件のハカランダが咲いたので、早く見に来てほしい」との電話が入りました。それで取るものも取り敢えず、悪天候という天気予報の中を出掛けて行きました。04年5月13日のことでした。
一見して初見だと判りました。これまで承知していたのはミモシとクスピの2つでしたが、これらとは明らかに形態が異なっていました。私にとっては新種でした。そしてその優秀さに驚き、花粉を貰い受けて私のミモシ選抜種3系統にかけてみました。遠縁交雑なので旨くいくだろうかと内心ハラハラしていたのですが、続々と結してきたときの喜びは、育種家にとって至福のひと時以外の、何ものでもありませんでした。

かつて宮崎は観光立県を目指し、当時の黒木博知事や宮崎交通の岩切章太郎社長を中心に南米の花木の導入が図られました。その中にこの新種のハカランダも入っていたようです。私はペルー原生のJ.acutifolia(ミモシの故郷、Yungasの雲霧林を更に北に伸ばした一帯に分布)ではないかと推察しているのですが、導入はブラジル主体とも言われていますので、J.brasilianaの可能性も残されています。

その何れが正しいか、両種の現物があればたちどころに判ることですが、ここではアクティフォリア(以下アクティ)として取り扱うことにいたします。フラワーパークかごしまには、宮崎市のTEさん選抜の6系統が導入されていますが(04年末、同氏のご好意で私も5系統の恵与を受けました)、花粉親として惚れ込んだのはFPK3と称している系統です。
この他に私の承知している範囲では、宮崎県日南市のSKさんが1系統、鹿児島県指宿市のSNさんが1系統お持ちで、市販もされています。

IMG_0627FPK3小苗-1

↑FPK3の接木苗、小苗の開花。一般のミモシに比べ花色が濃いのも、FPK3の特徴のひとつです。

IMG_0633FPK3大苗-2

↑FPK3の接木苗、大型台に接いだので4花穂が付きました。

上の写真はそのFPK3の接木苗で、いずれも接木1年後の開花の状況です。小苗は台木部分も含め地上17cm、大苗は実生3~4年生の大型台に接いだので、4花穂が開花しています。ミモシと対比しながら、FPK3の特徴を述べますと;

(1) ミモシの樹高15mに比べ、アクティは3~4mとされていますので遥かに小型ですが、FPK3は
   その中でも小型・矮性のようです。
(2) 接木(5~7月の生育期接ぎ)して丸1年、台木も含め17cmで開花していることからも窺えるように、
   稚樹開花性です。
(3) ハカランダでは1本の枝をとると、花はふつう枝条頂端部に形成され、下位節まで及ぶことはないので
   すが、このFPK3では下位節まで花芽分化が可能です(但し、開花までいたるかは別)。
(4) アクティの中でも、二番花が咲きやすい系統です。ミモシの場合二番花は相当大きな樹体にならない
   と咲きませんが、FPK3はこのサイズで咲くのかと思われるぐらいの、小さいサイズで咲きます。
   またミモシの二番花は同調して、各枝一斉に咲きますが、FPK3は各枝バラバラに伸長・開花してくる
   点が違います。その意味では二番花、三番花というふうに、はっきり区別するのが困難です。
(5) 耐寒性は、特に弱いようには見受けられません。

なお、花穂が詰まっていわゆる団子花になるのが、FPK3の一大欠点です(人によって評価は分かれますが、私は伸びやかな花穂の方が好きです)。

DSC04428FPK3団子花

↑FPK3の団子花。花穂軸が寸詰まりになり小花が密集して付くので、団子状になります。
自然に落花しにくいので萎凋した咲き殻が残り、見苦しくなるのが欠点です。

IMG_1835FPK3二番花-1

上の写真は、FPK3における二番花の開花です(ミモシのような同調性が無いので、二番花、三番花と整然と分けるのは困難。それで不時開花とした方がよいのですが、ここでは一番花以外を二番花と呼ぶことにします)。施肥レベルを上げて旺盛な生長を促した方が、二番花は付きやすくなりますが、それでも開花枝率は高いとは言えません。新梢の発生回数と開花枝率をどう高めていくかが、これからの育種の非常に大きな課題です。

IMG_0664FPK3直花と新梢-2

↑FPK3の直花と、新梢での花穂形成。

ミモシとは違って、一番花の開花中に少し遅れの直花を生じたり、新梢を伸ばして次の二番花の準備が始まったりします。このようにミモシのような整然とした同調性が無いのが特徴です。

いまひとつ、TEさんのTMNG2も優秀です。育種素材という観点から(将来のハカランダのあるべき理想の姿として)私が特に重視しているのは、上記(2)と(3)の2つの形質ですが、TMNG2はこの両形質に関しFPK3の一段上を行きます。また樹体は矮性なのに花穂がすきっと伸びて、団子花にならない点もFPK3を抜いています(FPK3は遺伝的に矮性で節間が詰まるから、花穂軸も詰まるのだと思っていましたが、TMNG2からすると両者に相関関係はないことが判ります)。ただ(4)に関してだけはFPK3の方が優れていました。 

IMG_2343TMNG2-2_20080808164329.jpg

上の写真は、ミモシ台に高接ぎしたTMNG2の写真です。
前年枝の全長に亘って短い担花枝が萌出し、開花している状況にご注目ください。
(左下と右下の長い前年枝に、その状況がよく出ています。)

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大型台へ接木したTMNG2(左)と実生#9(右)の開花。

その7(次回)に、続きます。

* KENさんからの今までの「ジャカランダについての考察」は、こちら↓をご覧ください。
その1 「KENさんのコメントから」 
その2 「ブエノス市内の開花状況」 
その3 「ミモシフォリア(J.mimosifolia)における稚樹開花」 
その4 「クスピディフォリア(J.cuspidifolia)における稚樹開花」
その5 「ミモシフォリア(J.mimosifolia)における耐寒性」

 KENさんのジャカランダについての考察

12 Comments

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2008/08/10 (Sun) 23:41 | REPLY |   

み−  

★鍵コメさん

ほんとに、こんなに小さいのに咲いてるなんて、不思議な感じですね。

「接木」・・・実はわたしも、よくわかってないんです(@@;)
KENさんに、お聞きしてみなくてはいけませんね。
でも、初心者過ぎて、恥ずかしいね(*ノェノ)

2008/08/10 (Sun) 23:55 | EDIT | REPLY |   

KEN  

ハカランダの接木

台木は共台です。普通ミモシフォリアの実生2~4年生で、鉛筆大以上のサイズが台木としては手ごろです。大きく分けて休眠期接ぎと生育期接ぎがあります。

(1)休眠期接ぎ;普通は冬季間ですが、ハカランダの場合は高温性で、最適期は萌芽直前の3下~4上頃です(場所やその年の気候によって、若干異なる)。方法は切接ぎによります。下ほどではないが、穂木が乾燥しないよう保湿が必要です。

(2)生育期接ぎ;適期は5中~7末ごろで、保温・加温の設備があれば、9月に入ってもよいでしょう。樹液の流動が活発で、台木の皮がよく剥げることが肝要。台木への切りこみは、T字芽接ぎに準じるT字型か、袋接ぎに準じるI字型とし、穂木は芽接ぎそのものとするか、切接ぎに準じた「枝+芽」とします。

生育期接ぎにおける活着の要諦は、活発に活動している芽の存在の如何。そのために摘心や切り戻しをし、穂木の芽を動かしてから接木にとり掛かることが肝要です。その次は保湿。接木後かるく水をスプレーして、ポリ袋(この方にもスプレー)を被せ、湿度を保ちます。但し、過湿では腐らすことがあるので、要注意です。また袋内に直射日光をいれて高温にしないよう、配慮も必要です。活着したら慣らしをしながら、袋を取ります。

なお、接木時の結束は専用のビニールテープか、パラフイルムを使います。

2008/08/11 (Mon) 12:49 | REPLY |   

み−  

★KENさん

早速、質問の回答をコメントくださって、ありがとうございます。

なるほど、台木は、違う木だけでなく、同じ種類のものも使うのですね。

接木は、恥ずかしながら、したことないのですが、休眠期に接ぐ方法と、生育期に接ぐ方法があるのですか?
おもしろいですね。

挑戦する日のために、しっかりお勉強させていただかなくては・・・。

2008/08/11 (Mon) 14:43 | EDIT | REPLY |   

Yu  

おはようございます

台木は、同じ種類のものを使うのですね。
トマトの接木とか聞いたことがありますが、どうやっているのかな~?って思ってました。トマトはトマトなのかな~e-3
「趣味の園芸」でシャクヤクの台木にボタンを接木して・・・だったかしら、違う木に接いでも上手く花が咲くんだ・・・ってびっくりしましたv-237
当然同じ仲間の木だから付くのでしょう・・・・接木をしたら丈夫とか、花付きがいいとか・・・いい性質ができるんでしょうね。

v-21ジャカランダはノウゼンカズラの仲間v-441v-442v-441
ジャカランダ同士ではなくて、仲間の木に接木したら・・・どうなるかしらv-361
しかしノウゼンカズラも夏の花でしたね・・・・v-297
この種類に接いでも冬に強い花は出来ないか~v-408
耐寒性のある違う台木につけたら・・・e-60e-235e-60
な~んて素人考えだな~i-229・・・そんなに簡単じゃないわよねv-392
簡単じゃないから遣り甲斐がある・・かな~v-354

2008/08/12 (Tue) 07:54 | EDIT | REPLY |   

み−  

★Yuさん

おはようございます~!

KENさんにされたら、こんなことも知らないのか?
と、あきれられることばかりと思いますが、わたしは、種蒔きさえ普段はしないので、知らないことが多くてお恥ずかしい限りです。
接木についても、然りです。
あわてて、ネットでお勉強しましたv-393v-356
でも、考えたら、接木って不思議ですよねv-361
植物が融合し合うんでしょう?
古くからある技術ですが、台木と穂木のいいとこ取りが出来るなんて、素晴らしいですv-424

ジャカランダは、同じジャカランダの台木とのことですが、他の木と言うより、ミモシの良さを引き継ぎながら、もっといい品種にということなのかな?v-252v-22v-252
でも、KENさんやみなさんが、長年(10年単位?)研究しても、まだ販売に至らないんですから、並大抵に簡単なことではないのですねv-390
みなさんのご苦労が、早く報われるといいですね~v-354v-352

2008/08/12 (Tue) 09:51 | EDIT | REPLY |   

KEN  

接木の親和性

接木は何でもつがるというわけには参りません。

確か親和性が何とかあるのは属(genus)の段階までで、それ以上に縁が離れると駄目だったように思っています。

属間の一番近しい例は、カラタチ(Poncirus trifoliata)台にいろいろなカンキツ(Citrus属)を接ぎますよね。

私は金鈴樹(Tecoma stans)が台木に使えないだろうかと、Jacaranda やTabebuia(ラパーチョ)を接いで見ましたが、親和性はありませんでした。

次のJ.oxyphyllaでは、ミモシフォリア台への接木がクロロシス解消に繋がることを取上げようと思っています。

2008/08/12 (Tue) 16:42 | REPLY |   

み−  

★KENさん

そうですね。
なんでも、繋がるというわけではなくて、属までは、同じものでないとダメということなのですね。

>私は金鈴樹(Tecoma stans)が台木に使えないだろうかと、Jacaranda やTabebuia(ラパーチョ)を接いで見ましたが、親和性はありませんでした。
なるほど・・・。
KENさんも、ミモシ以外のものでも実験済みなのですね。
ラパーチョも、これからですね。

次の記事も、楽しみにしています。

2008/08/12 (Tue) 17:05 | EDIT | REPLY |   

Yu  

こんにちは

専門家の方を相手に他の木ではどうかしら?と・・・・
好き勝手言ってしまいましたv-435

接木と簡単に言っても、接いでからすぐにひっつくわけではないので、
その待ち時間が長いですよね。
忍耐・・・・
失敗にも、成功にも結果が出るのに同じ時間かかるんですもんね・・・
大変だわv-393
私も素人中の素人・・・‘キング オブ 素人’ですから・・・v-408v-356
私もこれからの記事楽しみにしていますv-411

2008/08/12 (Tue) 18:34 | EDIT | REPLY |   

み−  

★Yuさん

いえいえv-363
Yuさん、遠慮しないで、どんどんコメントくださいね。
わたしを筆頭に、みんな素人なのですから、この際KENさんから、しっかりお勉強させていただきましょう
v-222v-392

いつも、コメント、ありがとうございますe-266

2008/08/12 (Tue) 19:07 | EDIT | REPLY |   

細井隆子  

ジャカランダについて

今年の春に通販で買ったジャカランダ(わい性接ぎ木苗)が、11月中旬ころ室内に入れた途端温度差が大きかったせいか、葉が全て落下した為枝を払いましたら間もなく天辺の枝先3本から葉と共に花芽が上がってきて今は淡い紫色に色好き、ふくらんできました。
この時期に花が咲くとは思いもしませんでした。
こういうことはあるのでしょうか?

2016/12/31 (Sat) 21:12 | REPLY |   

みー  

★細井隆子さん

隆子さん、はじめまして。
隆子さんは、どちらにお住いでしょうか?
ジャカランダを室内に取り入れられたということは、寒い地方にお住いなのかな?
桜も、寒さの後に暖かい日があると
勘違いして花が咲くことがあると言いますよね。
あるいは、塩害や毛虫などが食べることによって、葉っぱがなくなってしまうと
花が咲くことがあるようです。
隆子さんのジャカランダも、葉っぱが枯れて枝を払われたということですので
そのために花が咲いたのかもしれませんね。
今も室内に置いていらっしゃるのでしたら、暖かいと思いますので
ジャカランダも勘違いしたままで咲いてくれているのだと思います。

桜の場合ですが、こんなサイトがありましたので、良かったら参考にしてみてくださいね。
http://weathernews.jp/s/topics/201609/150545/

2016/12/31 (Sat) 21:47 | EDIT | REPLY |   

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