|
ジャカランダについての考察(KENさんから)・・・その9
|
|
2008/09/08(Mon)
|
|
<種間交雑育種――プベルラ・オキシフィラの場合(2)> さて、オキシフィラとその雑種が抱える問題点の故に、脱線をしてしまいました。話題を本題に戻しましょう。 ミモシフォリアが15mにも及ぶ巨大な高木だとすれば、PO雑種の特徴は、何と言っても矮性というのが最大の魅力で、この性質は何をおいても追求しなければなりません。ところがこの他にも、実は途轍もない特徴を備えていました。それは; ■ 開花跡の花穂遺存軸から小花と、そしてその集団である幼花穂を再形成できる、ということです。 私がこの現象に初めて気付いたのは、アルゼンティン在任中のことでした。モノは近縁のTecoma stans(金鈴樹とも呼ばれます)でした。この植物のごく一部なのですが、開花が終るとその跡の花穂軸に再生長が起って、新しい小花や花穂を生じて開花を続けるという、途方もない性質のある個体がありました。「いやぁー、この植物にはこんな性質があったのか…」。それは初めて知った、新鮮な驚きでした。 ![]() テコマ スタンス; 北はメキシコから南はアルゼンティン北部にかけて分布する広域種で、 基本種は典型的な短日植物ですが、日長に中性の四季咲き型の品種が市販されています。 ただこの品種は耐寒性がなく、鹿児島でも戸外の越冬は困難です。 変種angustatumは耐寒性ありとされており、その血を取り入れた丈夫な系統を開発中です。 因みに、これも近縁のラパーチョ・ロサード(ブラジルではイッペー・ロッショと言います;Tabebuia属の植物です)……遠目には日本のサクラそっくりの高木ですが、なんと一株の樹で延々と2ヶ月近くも咲き続けるという個体があり、これにも度肝を抜かれました。「三日見ぬ間のサクラ」とは大違いなのです。そのカラクリは、花穂(花房)軸の中に次々と小花や花穂(花房)を再生するというテコマ並みの能力抜きには、説明の付けようがありません。ただ何分にも地上10数メートルの高所での出来事でしたので、真相を確認しえないまま帰国しました。私にとってはだから、これは解決を要する重大な懸案事項なのです。 ![]() ラパーチョ・ロサード; 世界四大花木のひとつに数える人もいるほどの美花ですが、樹体はまだしも、 花蕾が寒さに極端に弱いため、ハカランダのように普及していません。 専らブラジルあたりの暖地産の移出が試みられたからだろうというのが、私の推測です。 耐寒性の強いブエノス型の、世界中への再移出が試みられるべきですが、 このブエノス型は幼形期が長かったり、概して花付きが貧弱だったりと、問題も抱えています。 しかし、上に述べたように花期2ヶ月に及ぶような優品もありますので、最高のものを選抜して 再普及に当たりたいものです。 写真はブエノスの街角で写したもので、樹の下の人物とその大きさを比較してください。 それで帰国後ノウゼンカズラ科の植物を注意して見ていますと、Campsis radicans、Incarvillea delavayi、Podranea ricasoliana 、Tecomaria capensisなどにもこの性質が見られました。そうなるとハカランダにもないものか、ということになります。ところがミモシにはありません。次のアクティにもありませんでした。それでハカランダでは駄目なのか、と半ば諦めかかっていたのですが、PO雑種にはそれが「あった!」のです。 ![]() 春開花した花穂軸跡における新しい花の形成。 大きな古い穂軸の各所に、大小様々の幼花穂が出来つつあります。 ![]() 少し判りにくいですが、左側の花穂は新しく出来た二次花穂で初花が開花を始めたところ。 穂軸を下に辿ると、未分化の古い小穂軸が2本見えます。 また中央の上に突き出た穂軸も、分化が起らなかった古い一次穂軸です。 右に見える花蕾は、総て新しい二次花蕾です。 この性質を上手に取り入れる、そして育種的磨きを更にかけていく、ということをすれば、極端な話、一旦開花をしたらその後は枝の再生産(新梢の再生)なしに、次々に開花を繰返すということだって、不可能ではないわけです。完璧な四季咲き狙いに、大いに貢献しそうです……凄いことではありませんか。 ■ 生育期間が長い(冬季における休眠期間が短い)ということです。 写真は06年12月16日に撮ったものですが、ミモシ・アクティ系列では黄葉が進んでいるのに、 PO雑種はまだ青々とした葉を付けているのに、ご注目ください。冬季=休眠(落葉樹では落葉)、すなわち温帯の植物は冬には深い眠りに入る、というのが北半球温帯圏に住んでいるわれわれの常識ですが、PO系列は冬の間も温度さえあれば何時でも生長を再開しますよ、という顔をしています。 また寒さで枯れては困るからと、オキシフィラを室内に取り入れましたが、花穂が分化してきて(07年2月16日)、どんどん伸びてきました(3月2日)。2月3日拙宅ではこの冬一番の寒さを経験したばかりだったのに、です。 このようにPO系はなかなか休眠に入らず、ちょっとでも温度があると生長が始まります。ですから霜でやられさえしなければ1月に入っても開花が可能です。07年の晩秋、遅く出蕾した花蕾があって、年が明けた今年1月10日、開花間際にまで達していました。ところが折角の花蕾を、花蜜を求めてきた目白が啄ばんでしまったのです。この不測の事故がなければ、冬の遅い開花を楽しむことが出来たはずでした。 ミモシもアクティも不時開花はします。しかし、シーズンのそんなに遅くまでは開花しません。せいぜい10月下旬までが、今のところこの系列の限界でしょうか。 ただ、この冬の間も休眠をしない(休眠が浅い)という現象は、耐寒性の面から見たら両刃の刃です。休眠が深い方が、耐寒性は強化されるからです。これに関連した観察を述べますと; 06から07年にかけての冬は鹿児島でもかなり厳しい寒さが訪れ、07年2月3日には拙宅でもマイナス2,2℃を記録しました(冬季における耐寒性を検討しようと、被験植物のすぐ傍に2種の温度計を設置し、毎日温度を測定しました。すぐ近くの水道栓のバケツには、厚さ4mmの氷が張りました)が、PO雑種にはなんら被害は出ませんでした。少なくともPO雑種は、この程度の低温なら耐えられることが証明されました。ただ耐寒性は単に温度だけの問題でなく、その時の風や湿度、それに時間などの要素も絡んできますので、簡単に何度と割り切れないところがあります。 なお、本稿では特に取上げませんでしたが、PO雑種には一部のアクティフォリアに見られる、前年枝のほぼ全域に亘って担花枝を形成するという、特性も持っていました。このシリーズ 「その6」 で、このことの持つ育種上の重要性を指摘しましたが、これもPO雑種の大変な魅力のひとつです。大いに活用したい形質として、付記しておかねばなりません。 ![]() 越冬試験開始時(06-12-18)の状況。 ブーゲンビレア(赤い花)やゴールデン・シャワー (後列右側の植物で葉の一部に寒害による「萎れ」が出かかっています) それに種名不詳のCassia2鉢も避難させています。深い庇のある建物の南面です。 ![]() 霜害発生後(07-2-3)の同一場所の状況です。 ブーゲンビレアはまだ咲き残っていますが、ゴールデン・シャワーと種名不詳のCassia2鉢は 完全に落葉・枯損しました(但し地下部は生き残って、その後何とか再生しましたが)。 これらに比べPO雑種の葉は緑のままで、障害はまったく見られませんでした。 ![]() 別の場所ではミモシ・アクティ系列に、同じ日にこのような葉焼けが出ました。 その10 (最終回) へ続きます・・・。 |
![]() |
|
コメント |
|
- -
KENさんすごいですね。 ジャカランダ博士ですね。 私の方は、だんだんと頭の中がごっちゃになってきましたよ〜 みーさんのお家のジャカランダ、綺麗ですね。 こんなに咲いてくれると大きくなってもいいですよね。 緑のカーテンのゴーヤ見事。 畑に植わっているゴーヤのように繁ってますね。 きっと土がいいのでしょうね。 あれだけ繁っていたら実も沢山収穫できるのでしょうね。
2008/09/08 10:08 | URL | ミュー #-[ 編集]
- ★ミューさん -
あらら・・・。 昨夜、画像が見られなかったですか? それは申し訳ありませんでした。 また来ていただき、ありがとうございます。 専門的なお話で、少々難しいですが、このようなところで貴重なお話を公開していただき、大変恐縮に思っています。 ジャカランダの育種への道のり、ご苦労がありますが、成功するといいですね。 下の記事も見ていただき、ありがとうございます。 ゴーヤ、すごいでしょう? なかなか、あんなにびっしり茂ってるのはめずらしいですね。
- -
ほぉほぉ・・・みーさんってよく観察してるんですね^^ 好きっていうのもあると思うけど、やっぱりみーさん、すご! 今日はこちら、晴天。 日差しも強いし、動くと汗だけど、 やっぱり秋の気配です。 最近毎日夜雷ゴロゴロで、今日はどうだろー。。。
- ★きらりちゃん -
えーーーっ!!! 全然すごくないですー!(@@;) 今日はこちらは、曇り勝ちだけど、時々日が差し・・・やっぱり日が当たると暑いです。 でも、真夏とは違うかな? 早く、動いても暑くない秋本番になって欲しいな・・・。 きのうの夜、東京は豪雨だったんじゃない? ニュースで見たよ。 毎日夜、ゴロゴロ鳴ってるんだ・・・。
- みーさんこんばんは -
おお〜KENさんのハカランダ育種実録シリーズ!毎回読み応えありますね〜。 南米でのお写真も楽しみにしています。 タベブイアの大木、息をのみますね!ほんとにすばらしい、こんなの見てみたいものです。 手持ちの図鑑の写真もちょろちょろ咲いているものだったので、このお写真、ほんとに感動しました♪ 「開花跡の花穂遺存軸から小花と、そしてその集団である幼花穂を再形成できる」 という状態なのかわかりませんがうちのノウゼンカズラ科のパンドーレアも次々開花しております。なんとなく前に花穂出た茎から花が出てきてるような感じ、観察力って生まれつきないと訓練が必要ですね、わたしただ「花咲いた〜」と思ってるだけなので。 明日観察してきます。
2008/09/08 20:54 | URL | ami #GCW2G1uQ[ 編集]
- 見えた! -
あっ今日は一番上の記事から見える! 今までは最新の記事がみれなかったのかなぁ〜 ジャカランダの記事凄いね。 編集で食べていけるね! 寝かしとくのはもったいないな。
- ★amiさん -
こんばんは〜! KENさんのシリーズ、後1回でおしまいになりました。 いつも読んでくださってありがとうございます。 タベブイア、すごいですよね。 あんなに大きいんだ・・・。 ドーム状に咲いて、実際に見たら、ほんとに腰抜かしそうですね。 なんか、南米行ってみたくなりました。 パンドーレア、次々に咲いているのですか? 素晴らしい〜! 観察力、なかなか難しいものですよね。 見ているようで、肝心なところを見ていなかったりします(ーー;)
- ★kurikoさん -
え〜っ! 見える時と見えない時があるの〜?(@@;) 他の人もそうなのかな? 何が悪いんだろうね。 ごめんね・・・(ToT)ゞ >編集で食べていけるね! それは褒め過ぎだけど、好きな方だよね(^^;) 食べていけたら嬉しい・・・(笑)
- おはようございます -
・・・
え〜〜っと・・・難しいお話部分は、もう少しゆっくり読ませていただいて・・・ でないと、脱水した洗濯物が、お団子状態で乾いちゃうから・・・ ![]()
とりあえず「ラパーチョ・ロサード」これ
綺麗ですね〜 2ヶ月も咲き続けるなんて・・・・
間近に見てみたいですね〜〜〜(絶対無理ネ )
地球上にはいろんな花木があるんですね〜〜
大きいんだな〜〜〜地球
宇宙から見てたら、私なんか、毎日ぜ〜〜んぜん動いてないみたいよね ![]()
2008/09/09 07:45 | URL | Yu #depbjF66[ 編集]
- 開花後の花穂 -
amiさん。はじめまして。みーさんのこの場をお借りします。 みーさんの今年8月1日の「剪定前のジャカランダ…」をご覧ください。その2、3番目の写真の説明で「先の方に、つんつん出ているのは、花の咲いた後です」とありますよね。実はこれが(花穂の遺存軸)生きているかどうかが、鍵なんです。 ミモシフォリアやアクティフォリアでは、開花が終ってら、直ぐに褐変して駄目になってしまいます。ところがPO系はこの花穂軸が生きていて、暫くするとその穂軸のあちこちに小花や花穂が出来てきます。パンドレアも気をつけてご覧になったら、PO系と同じのはずです。 ただ育種では「そのような性質がある」だけでは駄目です(これ自体もオオゴトなのですが…)。「その性質を最大限に引き伸ばす」という、次の措置が加わらないと、優れたものにまずはなりません。
2008/09/09 10:09 | URL | KEN #-[ 編集]
- ★Yuさん -
おはようございます〜! あはは ![]()
脱水した洗濯物は、早く干さなくっちゃね・・・ ![]()
ラパーチョって、すごいですよね〜 ![]()
こんなに綺麗なのが、2ヶ月も咲き続けるなんてね〜
ほんとに、実際に咲いているのを見てみたいものです
最近はオーストラリアの植物も、日本で増えては来ましたが、南半球の植物は、北とは違うものが多いですよね
わたしは、南半球には行ったことがないので、こうして見せていただくと、とても嬉しいです ![]() ![]()
- ★KENさん -
おはようございます。 おいでくださり、ありがとうございます。 >みーさんの今年8月1日の「剪定前のジャカランダ…」をご覧ください。その2、3番目の写真の説明で「先の方に、つんつん出ているのは、花の咲いた後です」とありますよね。実はこれが(花穂の遺存軸)生きているかどうかが、鍵なんです。 なるほど! 大変よくわかる説明です。 そう言えば、わたしが育てているギョリュウの木も、花の後の「花穂軸」が生きていて、その先にまた花が咲きます。 我が家のジャカランダの「花穂軸」は、枯れてしまうので、切り取ってしまいましたが・・・。 パンドレアも、PO系と同じなのですね。 >ただ育種では「そのような性質がある」だけでは駄目です(これ自体もオオゴトなのですが…)。「その性質を最大限に引き伸ばす」という、次の措置が加わらないと、優れたものにまずはなりません。 う〜ん! 育種というのは、本当に大変なものですね。 店頭に並ぶ新品種を、いつも何気なく買っていましたが、裏に育種家の方々のこんなご苦労が隠されていることを知った今では、たたずまいを正す思いです。
- -
みーさん、夢がひろがりますね。 >一旦開花をしたらその後は枝の再生産(新梢の再生)なしに、次々に開花を繰返す…。 ああ、ジャカランダに限らず、そんな花木があったら(もちろん小低木で)、我が家のベランダなんて、万々歳です。 ありとあらゆる可能性を盛り込むんですね、育種って。
- ★sissiさん -
こちらにもコメントありがとうございます。 >花穂(花房)軸の中に次々と小花や花穂(花房)を再生するという能力 すごいですね。 ラパーチョ、こんな美しいてんこ盛りの花が、2ヶ月近くも咲くものがあるなんて、びっくりです。 KENさんが、度肝を抜かれたという驚きが伝わります。 ただ、その性質を生かせるかどうかとなると、簡単には行かないのが難しいところですね。 育種の世界は、実現出来る出来ないにかかわらず、大変な夢をはらんでいるものだということが、よくわかります。
|
|
コメントの投稿 |
![]() |
|
トラックバック |
|
トラックバックURL
→http://mie0123.blog44.fc2.com/tb.php/666-e530ce61 ![]() |
|
| メイン |
|































2ヶ月も咲き続けるなんて・・・・
)



